この世の足かせ

この世の足かせ

はじめに

記事では、葬式や回向のことばかり書いているので、寺院には、葬式の依頼がさぞ多いと思われそうです。実は、葬式に限って言えば、信徒さんを含めてほとんどありません。

それには大きくふたつの理由があります。

ひとつは寺院が、主に生きている人?の救済を対象にしているということ。それから、もうひとつは田舎の場合、特に顕著ですが、親せきの手前、ご近所の手前、葬式等は檀家寺等で行うからです。

たとえば、生前信徒さんが、わたしたち寺院での葬式を希望していたとしても、親族の了解や近所の理解なしでは難しいのです。このように人は生きていく上で、多かれ少なかれ、現世の中にしがらみというものがあります。

それらのしがらみとは、人の外にあるのか、それとも内にあるのか、そもそも、それらの根源にあるものは一体何なのでしょう。

今回は、普段思っていることを、止めどなく書いてみました。

見えない壁

宗教、ジェンダー、思想など、触れるには躊躇してしまう事柄がこの世には多く存在します。

こうして、目に見えない世界を記事にするにしても、それを感じることができます。このブログの記事にしても、無意識のうちにかなり内容を選別して掲載してしまうところも、わたしの社会経験上長い間培われた見えない世間に対する忖度が現われています。

それは、人生も最後のカーブにさしかかり、社会人として生きてきて、触れていいもの、触れてはいけないもの、その線引きを学んできたこと。さらには、目に見えない世界を深く掘り下げてしまうと、一般的に理解されない領域に踏み込んでしまいそうだからとも言い換えられます。

個の時代に移りゆく現代にあっても、共同体よりはみ出しているもの、性質、性格が異なるもの、それらについて、自由に語れない、受け入れない風土は未だ根強くあります。

目に見える世界だけに生きること

目に見えない世界を中心とした生活の例としては、イスラム教がそのひとつに挙げられるでしょう。人のあらゆる振る舞いは、すべてコーランに書かれているため、敬虔なイスラム教徒の中には、親切をした当人ではなく神に感謝を捧げるほどです。

また、毎日欠かさない礼拝や断食の習慣など、わたしたち、日本人にとっては信仰が深く生活に入り込んだイスラムのような生き方にも戸惑ってしまいます。

一方、目に見える世界だけで、すべてを説明し生きようとするのも、その先にあるものは徹底した法治社会となる可能性もあって、今よりもずっと生きづらい世の中になってしまうかもしれません。というのも、見える見えないに関わらずこの世の罪が、この世だけで終わるとするならば、その最後の砦は個人の倫理観しかありません。

価値観の多様化した現代では、統一した倫理観を確立・継承していくことは非常に困難です。社会的に拘束されない限り、何をしても許されるし、何をしても構わないという論理になることでしょう。

実際、その行動理論で生きている人々が周りにはたくさんいます。また、この世だけで終わるとすれば、出来るだけ面白おかしく生きていきたいのが人の常です。

日本も、やがては精神修養などどこ吹く風。自己の欲望だけを求めながら、徹底した個人主義の統制社会に大きく舵を切っていくのかもしれません。合衆国などが、その先例といえるでしょう。

共同体の中に生きる

前段の葬式のように、例え目に見えない世界では、本人が望ましいと希望していても、個人の意思に関わらず漠然とした共同体の価値観に縛られてしまいます。

現世のしがらみというのは、まだ村意識が残存するコミュニティはもちろんのこと、都会にあってもSNSをはじめ小さな集まりにでも、それは存在いたします。

社会的に生きる人間にとって、コミュニティの規模に関わらずそれを無視して生きることは困難です。目に見える世界と目に見えない世界とのバランスを取りながら生きていくことが大切です。

おわりに

この記事に検索してたどり着いた方々は、目に見えない世界をすべて受容しないまでも、多少なりとも理解し尊重する気持ちがあると思われます。目に見えない世界に入れば、そこからは様々な智慧や生きる指針が見えてきます。

目に見えない世界というだけで、いかがわしい宗教活動と同一化され、すべてを遠ざけてしまっては人生の損失に他なりません。

邪教がはびこる現代では、目に見えない世界に対するまなざしは遠くなる一方

わたしたち寺院の僧侶が、目に見えない世界で得た智慧や生き方を伝えようにも、この世に立ち込める暗雲に阻まれてしまって、伝わって行かない歯がゆさを感じてしまいます。

それが、例えば一念三千のこの世界の宿命でもあるならば、受け入れざるを得ないかもしれません

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